2026.09.08
公共施設の広報・プロモーション講座③
何を伝えるのか? 施設の魅力の見つけ方
公共施設の広報について考えるとき、多くの担当者が最初に悩むのが「何を発信すればよいのか」という問題です。
ホームページやSNSを始めてみたものの、イベント情報や休館日のお知らせばかりになってしまう。そんな悩みを抱える施設は少なくありません。
しかし、広報の本質は情報を発信することではありません。
本当に重要なのは、施設の魅力や価値を利用者に伝えることです。
前回の記事では、「誰に伝えるのか」というターゲット設定について解説しました。今回は、その次のステップとして、「何を伝えるのか」というテーマについて考えてみたいと思います。
施設の魅力は意外と見えていない
公共施設の運営に携わっていると、その施設のことを知り尽くしているような気になります。
しかし実際には、施設の魅力が整理されていないケースは少なくありません。
例えば図書館であれば、多くの担当者は「本を借りる場所」と説明します。しかし利用者にとっての価値は、それだけではありません。
静かに勉強できる場所であったり、新しい知識に出会える場所であったり、人との交流が生まれる場所であったりします。
スポーツ施設も同様です。運動をする場所という説明は間違いではありません。しかし利用者が求めているのは、健康づくりかもしれませんし、仲間づくりかもしれません。あるいはストレス発散や生きがいづくりかもしれません。
つまり施設の魅力とは、施設が持つ機能そのものではなく、利用者が得られる価値のことなのです。
「特徴」と「魅力」は違う
広報でよく見られる失敗の一つが、特徴ばかりを伝えてしまうことです。
例えば、
「駐車場があります」
「会議室があります」
「人工芝のグラウンドがあります」
という情報は施設の特徴です。
しかし、それだけでは利用したいという気持ちにはなかなかなりません。
一方で、
「家族で気軽に訪れることができる」
「天候を気にせずスポーツを楽しめる」
「地域の仲間と交流できる」
といった表現になると、利用する場面がイメージしやすくなります。
利用者が知りたいのは施設の機能ではなく、自分にとってどんなメリットがあるのかということです。
そのため広報では、「何があるか」ではなく、「何ができるか」を伝える視点が重要になります。

利用者の声の中に魅力は隠れている
施設の魅力を見つけるために有効なのが、利用者の声に耳を傾けることです。
利用者アンケートや日々の会話の中には、施設側が気づいていない価値が数多く存在しています。
例えば、運営側は最新設備をアピールしたいと思っていても、利用者は「スタッフが親切だから利用している」と感じているかもしれません。
また、運営側はイベントを強みだと思っていても、利用者は「静かで落ち着ける雰囲気」を評価している場合もあります。
施設の魅力は、運営者が決めるものではありません。
利用者が感じている価値こそが、本当の魅力なのです。
魅力は一つではない
公共施設には様々な利用者がいます。
子育て世代、高齢者、学生、働く世代など、それぞれが異なる目的で施設を利用しています。
そのため、施設の魅力も一つではありません。
同じ公園であっても、子育て世代にとっては遊び場であり、高齢者にとっては健康づくりの場であり、地域住民にとっては交流の場でもあります。
広報では、一つの魅力だけを伝えるのではなく、利用者ごとの価値を整理しながら発信していくことが重要です。
ターゲットによって伝える魅力を変えることで、情報はより多くの人に届くようになります。
広報は施設の価値を翻訳する仕事
広報担当者の役割は、施設の情報をそのまま発信することではありません。
施設が持つ価値を利用者に伝わる言葉に翻訳することです。
施設側が当たり前だと思っていることでも、利用者から見れば大きな魅力であることがあります。
だからこそ、まずは施設の特徴を整理し、その先にある利用者のメリットや体験を考えることが大切です。
その作業を通じて、初めて「伝えるべき魅力」が見えてきます。

まとめ
公共施設の広報で大切なのは、施設の機能を説明することではありません。
利用者にとってどのような価値があるのかを伝えることです。
特徴と魅力は似ているようで異なります。魅力とは、利用者がその施設を利用する理由であり、そこで得られる体験や価値です。
施設の魅力を正しく整理できれば、ホームページやSNS、パンフレットなど、あらゆる広報媒体の内容は大きく変わります。
広報とは、施設の価値を見つけ、それを利用者に伝わる形で届ける活動なのです。
次回予告
第4回は、
「写真で伝わる施設、伝わらない施設」
をテーマに、公共施設の広報で見落とされがちな写真の重要性について解説します。
同じ施設でも、写真の選び方ひとつで印象は大きく変わります。利用者の心を動かす写真とはどのようなものなのかを考えていきます。
